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睡眠・学ぶ・盗む!トップに君臨するクリエイターたちが実践している3つのこと!


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過剰なオリジナル信仰には問題もある

 

「休む」ことでいいアイデアが生まれる

「寝る子は育つ」とよく言うが、それは大人にも当てはまるようだ。

とりわけアイデアや企画といった「クリエイティビティ(創造性)」が求められる仕事に就いている人は、"努力してでも"よく寝たほうがいい。

大切なのは睡眠だけではない。何もしないリラックスした時間も大事だ。

コーヒーを飲んでいる、シャワーを浴びているといったリラックスの時間の最中に、「いいことを思いついてしまった」という経験をしたことがある人は多いと思うが、人間の脳の働きを考えれば、それはごく自然なことである。

脳の研究が進むにつれて、そういったことが明らかになり始めた。そして近頃では、ちゃんと寝る、休むは、世界のトップクリエイターたちが実践する仕事の"新常識"になり始めている。彼らは「寝ないでいい仕事なんてできるわけがない」と口をそろえる。

「それは職場環境に恵まれた海の向こうの話でしょう?」と思うかもしれない。だが、クリエイティブ業界(特にマーケティング系)で働く人が多忙なのは、基本的に欧米も日本と似たり寄ったりのところはある。

つい先日もこんな記事を見かけた。イギリスのベテランクリエイティブ職が、この業界の「働きすぎ状況」に対して疑念を表明したものだ。

 

世界的に仕事がハードなことで知られるこの業界でさえ、働きすぎはもはや"非常識"になりつつあり、新しい仕事のやり方を模索する動きが顕著になっている。

先日、世界各国のクリエイター18名が共著で執筆した書籍『クリエイティブ・スーパーパワーズ』の翻訳していて、その変化に気づいた。

それにしてもなぜ、「休む」ことでいいアイデアが生まれ、その結果として仕事の生産性も高まるのだろう?

前述したように、それは脳の働きと関係がある。意識して(変に努力して)アイデアをひねり出そうとするのは、本来は脳に処理させるべきでない"宿題"を押し付けてしまっている状態なのだ。

 

「無心」が活発化させるクリエイティブ思考

よく言われることだが、イノベーティブなアイデアや企画は、すでに存在する何かを新しく組み合わせることで生まれてくる。新発想と言っても、まったくのゼロから何かが生まれるわけではない。

しかし、それを生み出す抽象思考は、脳にとって実は優先度の低い作業でもある。未来に待ち構える複雑な問題の解決策より、「今日、昼何食べよう?」といった目下の課題のほうが個の生存にとって大切。脳の力はまずそちらに注がれてしまう。

ゆえに想像力に関わるような高度な作業を行うときは、一度「脳をランダムに遊ばせて」おいた上で頭のスイッチを切り替え、思考を熟成させる時間を持つ必要がある。リラックスしているときにいいアイデアが浮かぶのは、脳のこの働きによるものだ。

適度に単純な作業をしながら考えることで、クリエイティブ思考はより活性化すると言う人もいる。イギリスのセントラルランカシャー大学で、こんな研究が行われた。

ふたつのグループにマグカップを見せて、「どうやればこのカップをクリエイティブに活用できるか?」のアイデアを考えてもらう。

一方のグループは電話帳をひたすら書き写しながらアイデアを考え、もう一方はアイデアを考えることのみに集中するように言われる。

すると、電話帳を書き写しながら考えたグループのほうが、成績がよかったという。

やはりクリエイティブ思考は、ある種"無心"になっているときのほうが活発になると言えそうだ。だが、ただ遊んでいるだけではいいアイデアは出ない。助走期間が必要だ。

「世界にひとつだけの花」の秘話

このあいだ、シンガーソングライターの槇原敬之氏が、テレビで興味深いエピソードを披露していた。

彼はあるアーティストから楽曲の制作依頼を受け、1週間かけて曲を完成させたもののボツになった。

その段階で〆切までに残された時間は1週間しかなく、半ばヤケッパチの気持ちで数日放置していたそうだが、ある日目が覚めたらなぜか花屋の光景が目に浮かんだ。

そこから言葉とメロディが自然と湧いてきて、ものの数時間で完成させた曲が、SMAPの「世界にひとつだけの花」なのだという。

これもクリエイティブと脳の働きの関わりを考える上で、参考になる話だ。彼は睡眠後のスッキリした時間に素晴らしいインスピレーションを得たわけだが、ボツになった1曲目をつくる助走のプロセスが、やはり必要だったのだろう。

「さすがだな」と思ったのは、槇原氏はいつひらめきが来てもいいように、寝ている場所のそばにPCや機材などを置いていたとのこと。この手の話はいくらでもあり、ポール・マッカートニーは、「イエスタデイ」を夢の中で作曲したと語っている。

 

 

「まっとうにパクる」という技法

世界のトップクリエイターたちが実践する仕事の新常識は、「ちゃんと休む」以外にもある。それは「パクる」である。「パクる」などと言うと誤解を招きそうだが、何も著作権侵害などの違法な行為を推奨しているわけではない。

すでにある作品や発明の根底にあるエッセンスを読み解き、自分が解決すべき課題に合わせて、発想をジャンプさせたり、ほかのものと組み合わせたりしながら、新たなソリューションを生み出すことである。

これは必ずしも"新常識"ではなく、偉大な芸術家はいつの時代も実践してきたことだ。

ピカソに「凡人はコピーする、天才は盗む(Good Artists Copy, Great Artists Steal.)」という名言があるが、ここで言う「パクる」は後者。当然のことながら、前者(コピる)はいまでは著作権侵害になる。

こういった言葉を残しているアーティストはピカソだけではない。この名言からしてだれかの"パクり"である可能性さえある。それくらい多くの作家やアーティストが、同趣旨の発言をしている。いくつか挙げてみよう。

「未熟な詩人は模倣する。成熟した詩人は盗む。良い詩人とはそれをさらに良いものにする人のこと。少なくとも異なる何かに変える力がある」(T.Sエリオット/詩人、劇作家)

「心に響くもの、想像力を掻き立てるものなら何でもパクってやれ。本物であることは大切だが、オリジナリティなどこの世に存在しない」(ジム・ジャームッシュ/映画監督)

「パクれるアートにしか興味ないよ」(デヴィッド・ボウイ/ミュージシャン)

このように「まっとうにパクる」は、昔からクリエイティブの技法とも言えるものだが、近代以降に顕著になった「創作のオリジナリティ」を最善とする、もはや信仰のような思い込みと著作権の整備によって、「パクる」は非常に後ろめたいことと考えられるようになった。特にビジネス(利益)が絡むとことは厄介だ。

「学びなおし」の重要性

だが、最近では過剰なオリジナル信仰は、むしろ豊かなクリエイティビティを狭めてしまう危険性さえあるのでは? と考えるクリエイターも増えている。

「オリジナル」であることをあまりに意識し、それ自体が目的になってしまうと、だれの心にも響かない独りよがりな創作にさえなりかねないからだ。

一方で長年の風雪に耐え、歴史の中で残っているものにはそれなりの理由がある。

「クリエイティビティ」を個人や特定の組織に属するものではなく、人類全体に対する資産、あるいは文化的遺伝子と考えれば、活用できるものは活用したほうがいいし、きちんとした形で次世代に引き継いだほうがいい。

だからこそ「学ぶ」ことが重要だ。著作権にしても、知識がなければどこからが違法とされ、どこまでが適法なのかもわからない(グレーゾーンもあるが)。

日本でも「社会人の学びなおし」が言われているが、世界のトップクリエイターたちもしきりとこのことの重要性を訴えている。世の中の変化のスピードが激しいこともあり、去年までOKだったことが、今年通用しないなんてケースもざらにある。

これまでに学んだことを捨て、新しい知見を吸収し続けることが、新常識になっている。

アルビン・トフラーは1970年に発表された『未来の衝撃』の中で、デジタル化が社会やライフスタイルに与える影響を予見しているが、彼は次のようにも言っている。

「21世紀の非識字者とは、読み書きができない人のことではない。学んだことを忘れて、新しく学びなおすことができない人のことである」

マネジメントの神様、ピーター・ドラッカーの次の言葉も有名だ。

「21世紀に重要なスキルはただひとつ、新しいスキルを学ぶスキルだ。ときが経つにつれ、それ以外はすべて時代遅れになるだろう」

「休め」「パクれ」「学べ」の3項目はクリエイターに限らず、あらゆる領域で働く人々にとっても、未来の常識になっていくのではないだろうか。